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百合という花 テーブルに置かれたティーカップから香る仄かな煙が、ゆったりとした時間を好むこの男にとって至高のひと時を与えていた。 木で造られた質素な、それでいてどこか優雅さを漂わせる背の高い椅子に腰掛け、今まで開いていた本を静かに閉じるとティーカップへと手を伸ばす。 しかし、その視線の先は手元ではなく、少し離れた木々の合間に立つ二人の人物へと注がれていた。 男は口元へ運ばれた紅茶の香りを鼻腔で存分に楽しみながら小さな声で 「やはり素晴らしい……」 と静かに漏らした。 木々の合間に少し開けた草原があり、そこで二人の女性がお互いの剣を重ね合い鋭い音色を響かせあっている。 さわやかな風が吹くなかで、二人は頬を上気させながら流れ落ちる汗を拭おうともせずに、ただ只管に相手の一挙一動に心を奪われているかのようだった。 「ふう……今日はここまでにしましょう」 長い緊張を破るかのように、陽を浴びて燃えるように赤く輝く髪色をした女性が口を開いた。 「は、はい! あの……あ、ありがとうございました!」 急いで剣を鞘へと戻し深々と頭を下げた女性の額には玉のような汗が浮かび、青く綺麗な髪が離れまいとしている。 慌てて頭を垂れた相手の様子を見て微笑をこぼした赤髪の女性は 「その様な礼は不要、と以前に申しました」 と優しい声で返した。 「セレンも腕を上げましたね。初めて逢った時より強くなりました」 セレンと呼ばれた青い髪の女性は顔を真っ赤に染めうつむき加減に、木々のざわめきにかき消されそうな小さな声で答えた。 「そ、それは、アルティナ様にこうして稽古をつけて頂いているからです……」 「ふふ、私は大した事はしていませんよ。貴方は自分の力で成長しているのです」 純白の布で頬を流れる汗を拭いながら、アルティナはセレンの瞳をみつめて強く言う。 みつめられ、稽古中よりもさらに上気した顔を恥ずかしそうに慌てて隠そうと背を向けたセレンを、不思議な表情でアルティナは眺めていた。 二人のやりとりを遠くから眺めつつ、まだ十分な熱をもった紅茶を男は一口啜ると 「香りが引立ちますね……」 と、感嘆の声を上げた。 男の隣にはいつのまにか、一人の年端もいかない少女が小さな袋を手に佇んでいた。 視線は決して男を見ず、木々の中に居る二人から逸らす事なく喋りだす。 「クッキーを焼きました。皆さんに食べてもらおうと思って」 小さな袋を二つテーブルに置くと、はじめて男の方を向いてそれまでの険しい表情をかえて微笑んだ。 男はティーカップを静かにテーブルに置くと、丁重にクッキーの入った袋を手にとり、結わえてあった紐を解いた。 「おや、ハート型ですか……これは手が込んでいますね。ところで、袋が二つあるようですが……私だけ特別でしょうか」 目を細めて喜びの表情を素直に表した男へ 「勘違いしないでください。一人あげる予定の人がいなくなって余っただけです」 少女は先程と同じような険しい顔に戻り、声を若干荒げて否定をした。 急な変化に戸惑いつつも、男は少女の視線の先に納得すると、少しおかしそうにクッキーを口に運ぶ。 「この味も悪くないですね……」 とつぶやいてから、しまったという風にバツの悪そうな顔で少女のほう窺ったが、少女は男の事など関心がないのか木々の方をじっと見つめたままだった。 視線の先にいるアルティナとセレンは、草原に腰を下ろし互いに屈託のない笑顔で話しをしている様で、時折セレンの顔が明るく輝いたり、頬を赤らめたりと 変化を見せ、その都度、少女も険しさを増したり、哀しそうになったりと変化を見せていた。 「アーシャさん、美味しいクッキーご馳走様でした」 その声で現実に引き戻されたようにアーシャは男の方に向き直ると 「いえ……では先に戻ります」 と、早口に挨拶を済ますとアルティナとセレンの方には振り向かずに小走りに去っていった。 男はアーシャの後姿を見えなくなるまで見送ると 「いまだ咲かぬ蕾もまた美しくあり」 誰に言うでもなしに一人つぶやくと、一度閉じた本をまた開いて視線を落とした。 男が再度読み出した本に気をとられかけた時、それまで陽に照らされていたページに突然の影が舞い、男が顔を上げて周囲を見渡すと、 アルティナとセレンの元に一人の竜騎士が空から降りてくるところであった。 竜騎士は女性であり、風で乱れた澄んだ水色の髪を手でまとめてから服装を正すと、セレンの方に一度視線を向けた後でアルティナに向かい騎士礼をとり口を開いた。 「アルティナ様こちらでしたか。そろそろお戻りになられるよう、スヴェステェン殿が申しておられました」 「スヴェステェンが……わかりました」 その名前を耳にした瞬間、セレンの表情が曇ったかのように見えたが、努めて冷静を保とうとアルティナに別れの騎士礼をとる。 アルティナは稽古後に外していた剣や鎧を身に着けると自らの竜の名前を呼び、愛竜と共に城へと戻っていった。 セレンはアルティナの乗る竜が見えなくなるまで空を眺めていたが、それも見えなくなると寂しそうな表情を浮かべ、さらに水色の髪をした女性へと恨みの表情を浮かべる。 「あなたね……私は家臣としての仕事をしたまでよ」 「それはわかってる」 「じゃあ、なんでそんな顔するのよ」 「……ルオンナルのバカ」 セレンに突然バカ呼ばわりされたルオンナルは怒る気にもならず、深いため息をひとつ吐くと呆れたような表情をした。 アルティナを尊敬し、慕い、憧れを抱いているセレンの気持ちを親友であるルオンナルは誰よりも知っていた。 誰よりも知っているからこそ、心の中で (わたしの気持ちも知らずに……セレンのばか……) と、静かにつぶやくのだった。 アルティナとの時間を奪われて落ち込むセレンをみて、ルオンナルは自身の手を強く握り締めると 「ミルフォースが飛竜の子が産まれたから見にこないかって……二人でいかない?」 少し頬を赤らめてセレンの顔を覗き込みながら誘いの声をかけた。 「うん……」 セレンはまだ落ち込みから復活していない様子で答えたが、それでもルオンナルは嬉しそうにしている。 二人は竜に乗り、飛竜の里であるリグナム火山の方向に飛び立つ。 そこにはセレンに寄り添うように飛ぶルオンナルの姿があった。 男は本を片手に紅茶を啜りながら、二人の竜騎士の影を見送っていた。 「一途な花も素晴らしい……」 ティーカップをテーブルへとおき、まだ残っていたクッキーを口に運びながら本へと視線を落とす。 数ページ読み進めたところで不意に独特な言葉遣いの女性の声が響いた。 「ヒュンター、何を読んでおるのじゃ?」 背の小さい幼さの残るエルフの少女が、ヒュンターと呼ばれた男が座っているテーブルへと肘をついて本のカバーを見つめていた。 「エルアートさんには似合わない物ですよ」 ヒュンターは丁寧に、それでいて少し棘を含んだ様な言い方でエルアートという少女へ答えた。 「どうせヒュンターのことじゃ、たんのう小説とかそういうなんたらぞえ」 「それをいうなら官能小説ですよ。これは違いますが、まあ、たんのうという意味では……」 「アヒャヒャヒャヒャ、わらわはその手の物は大好きぞ」 エルアートは口元を緩めると、手や指を妙な動かし方をして一人悦に入りかかっていたが、テーブルの上にそっと置かれていた妙な物に目をつけ手にとると 「花……かの?」 色々な角度から珍しそうに眺めはじめた。 「それは押し花という物です。本のしおりにしてまして」 玩具の様に扱うエルアートの手から押し花を優しく取り返すと、読みかけのページにそっと挟んで本を閉じた。 「その花はなんという名前じゃ?」 ヒュンターはティーカップに残っていた紅茶を啜ると、静かに椅子から立ち上がってエルアートにこう告げた。 「百合という花です、この世でもっとも美しい花ですよ……」 「ところでヒュンター、わらわの新しいおなごをみたいか?」 「それは遠慮しておきます……」 是非。 見てみたいです。 -- 名無しさん (2012-08-04 12 55 13) 名前 コメント
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{ select(seldat, これまでの経緯を回想しますか?) if (seldat == 0) { return() } scroll(karura) wait() hideSpotMark() showSpotMark(t_monk) msg(ミシディシ達、リュッセル城奪還部隊を支えるため、自らパーサ・パクハイトの 抑えに回ったアーシャ。) msg(しかし健闘むなしく部隊は破られ、そしてよりによってきちくエルフのエルアートに 囚われてしまった。) playBGM(我が栄光.mp3) talk(t_monk, く・・・) talk(t_elf4, アヒャヒャ、よい揉みごごちじゃ!うむうむ、グッドじゃ!) talk(t_monk, このようなことを・・・!) msg(必死にもがくアーシャ。だが、魔法を封じられ、後ろ手に縛られたアーシャに、 エルアートの暴虐を止める術はない。) talk(t_elf4, どおれ、そろそろわらわのハイパー兵器をみまってやろうぞ。 一度これを受ければ、二度とわらわから離れようなどとは思わなくなるぞ。) talk(t_monk, い、いや・・・やめて・・・おねがいです・・・!) talk(t_elf4, いやよいやよも好きのうちじゃ。とりゃーーー!) msg(そこまでよ!) playBGM(seren) talk(t_dk1,その手を離せ、きちくエルフ!) talk(t_elf4, およよ!?せ、セレン!?飛んで火にいる夏の虫とはこのことじゃ。 アーシャと尻を並べてかわいg) talk(t_dk1,青竜剣!!!) playSE(bom13) talk(t_elf4, あひゃああああああああああああああ!!!) talk(t_dk1,今よ、アーシャ!立てる?!) talk(t_monk, わ、わたしは大丈夫です!けど・・・わたしは・・・) talk(t_dk1,行こう、アーシャ!しっかりつかまってて!) playSE(swing04) talk(t_monk, きゃっ!) msg(縛めを解かれたアーシャはセレンの首に手を回し、セレンはアーシャの華奢な 身体を抱え、ライムとともに天高く飛び上がった。) playBGM(hoshi) talk(t_dk1,大丈夫?寒くはない?) talk(t_monk, は、はい・・・その・・・大丈夫ですわ・・・) talk(t_monk, (むしろ・・・暖かい・・・いえ、熱い・・・)) talk(t_monk, (心臓が・・・鼓動がやまない・・・ずっと高鳴ってる・・・)) talk(t_monk, (エルアートにあんなことをされそうになったから?急に天へと飛び あがったから?それとも・・・)) talk(t_dk1,?) talk(t_monk, (セレン様が・・・アルティナ様に似てきたから? ・・・違う・・・むしろ・・・)) talk(t_dk1,もうすぐ・・・リュッセル城につく。アーシャ殿のおかげで、ミシディシ殿はリュッセル城を奪還できた。) talk(t_dk1,対する私は・・・あはは・・・なんというか、合わせる顔がない状態だけど・・・) talk(t_monk, い、いいえ!そんなことはありません!だって・・・その・・・) talk(t_dk1,アーシャ殿?) talk(t_monk, (私・・・セレン殿を・・・)) wait(6) msg(こうして息を吹き返したリューネ騎士団にまた一輪、可憐な百合が咲いた。) msg(一つの大きな苦難を乗り越えた少女たちはより強く、より美しく、その華を 傷ついた大地に根付かせるのであった・・・) msg(そして可憐な百合、アーシャの恋は実るか・・・) talk(t_elf3, ) erase() hideSpotMark() } IF光闇のアーシャ列伝を見たら、ヒュンターが書けってゆった。俺は悪くない -- 名無しさん (2010-03-23 21 16 45) ふいたwww -- 名無しさん (2010-03-23 21 28 13) これはw -- 名無しさん (2010-03-23 21 38 08) おい紳士だな -- 名無しさん (2010-03-23 22 02 43) ななあし氏次第で変態という名の淑女が一人追加か・・・ -- 名無しさん (2010-03-23 22 28 31) ジェントルマンが詩を書いたみたいなイベントだ 感動したwww -- 名無しさん (2010-03-23 22 33 10) ヒュンターww -- 名無しさん (2010-03-23 22 33 56) ヒュンターお前……どうしてこうなった…… -- 名無しさん (2010-03-23 22 44 30) 今から違う物語が始まりそうだなww -- 名無しさん (2010-03-24 00 45 22) ハイパー兵器を挿入された場合はアーシャが悪堕ちしてダークビショップになる展開も欲しいな。 -- 名無しさん (2010-03-24 03 09 17) 実に紳士w でもちょっと時系列が変じゃね。確か、アーシャ合流→押し返し始める→リュッセル城奪還だったと思ったが -- 名無しさん (2010-03-24 04 55 50) もうエルアート主人公でいいよ -- 名無しさん (2010-03-24 10 33 29) 熱い展開、か?! -- 名無しさん (2023-07-30 15 48 33) 名前 コメント
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碑の建つ丘 オステアの街から北側の郊外にある小高い丘に、蒼いローブを纏った一人の女性が佇んでいた。 眼下には太陽に照らされ眩しく輝く海原が、復興の兆しを見せるオステアの街並みを優しく包み込むように湛えている。街並みからは、崩れた民家を建て直す職人が振るう槌の音色が遠く風に運ばれて心地よい響きを伝え、燦燦と輝く太陽の眩しさに手をかざして空を見上げれば、澄み渡った雲ひとつない青空を真っ白な鳥が弧を描いて飛んでいる。蒼いローブを身に纏う女性の目に映る景色は、彼女が長い間待ち望み、ようやっとの事で訪れた平穏な風景であった。 「先生。あれから随分と経ってしまいましたが……やっとご報告が出来ます」 小高い丘に設けられた石碑の前に立ち碑に手をつくと、ひんやりとした冷たさが石から伝わってくる。アルジュナは石碑に彫られた文字を細い指で上からなぞった。 この石碑は、先の戦乱で死亡した数多の人々が奉られたオステアの戦没者慰霊碑であった。兵士や民を問わず奉られ、台座には常に何かしらの花が添えられている。そのひとつがアルジュナが供えたストックの花で、茎先に重なり合う白い可憐な花弁が黒色の石碑によく映えていた。やや年月を経て苔に覆われだした台座の周りに、花の香りに誘われた蝶がひらひらと舞う。その何気ない動きに心の安らぎを覚え、以前は目深に被るほどにぶかぶかであった師から譲り受けた帽子を脱ぐと、それを石碑の前へと静かに置いた。長く伸びた金色の髪が風に吹かれてなびく。 「あの日、先生達が突然いなくなって、ボク大変だったんですよ。 でも、頑張りました……最初は辛かったけど、頑張って、頑張って」 ルートガルト二区でオステア国は二人の執政を同時に失った。第一執政ラファエルと、アルジュナの師でもあった第三執政ピコックの両名は、死霊に襲われたルートガルトの難民を救済するために異国の地でその命を儚く散らし、国を率いる三執政の内で最後に残されたのが第二執政のアルジュナただ一人。まだ幼さの残る年端のいかない少女が、一国の将兵を纏め上げ民を導くのにどれだけ心を砕いた事か。肩に掛かる重圧に幾度となく杖を投げそうになっては思い留まりながら、懸命に執政として駆けまわった。 「ラザムの使徒と同盟を結んだんです……イオナって人がちょっと怖かったけど。 それとグリーン・ウルスとも手を結びました。ここは可笑しな人達で怖くはなかったけど、大丈夫かなって心配が」 当時の事を思い出して、手で覆った口元からくすりと笑みが漏れる。 少女然としていた以前と違い、アルジュナはどこか大人びた風貌をみせていた。年月が流れ大人へと成長したのもあるが、多感な時期に起きた様々な経験が一層それを促がしたのかもしれない。胸の蕾は僅かではあるが膨らみを見せ、身体全体もやや丸みを帯びて開花する日を待っている。大きかった帽子はちょうどよい具合で、手足がすっぽりと隠れてしまっていたローブも格好がつき、肩口で揃えられていた髪は、いつ頃からか腰のあたりまで届くくらいに伸ばされて蒼いローブの上で踊っていた。 「魔王軍と戦って、何時の間にか魔王がいなくなって……ボク、ちゃんと死霊とも戦ったんですよ。 それから……結局、人間はいつまでもいがみ合ったままだったけれど……」 大陸は様々に入り乱れ、種族の壁や思想の壁という分ち合えない課題を残したまま、ラザムの使徒がその全域を手中に収める容となって戦乱は終息を見せた。各地の復興はラザムの使徒を盟主とした三国同盟の監視下に行われ、荒れ果てた国や街はかつての姿を取り戻しつつある。 ムクガイヤの謀叛から端を発したこの戦乱は、実に多くの種族が平等に犠牲を払う結果となり、様々な命題を含んで生き残った各々に語りかけていた。 「先生、これでよかったんですよね。 平和になったんですよね……ボク、頑張りましたよね」 杖を握る手に僅かに力が篭る。 「褒めてくれますよね……先生。 逢いたいです……先生に……逢いたい」 石碑に崩れるように身体を預けた。最期の別れの時、老いた手で優しく抱きしめ頭を撫でてくれた師の姿が目蓋の裏に甦る。 暫しそのまま石碑にもたれる様に目を閉じていたアルジュナが徐に姿勢を正した。遠くから時刻を告げる時計台の鐘の音が響いてくる。 「もう、いきますね」 頭に帽子を載せると、石碑に背を向けてゆっくりと歩き出す。風が優しくその頬を撫でた。 ふと、誰かに呼ばれた気がして後ろを振り返る。 石碑の前でピコックがアルジュナに向かい微笑みかけていた――ように感じた。 アルジュナは小さく頷くと、長く伸びた髪をなびかせて碑の建つ丘を後にした。 ピコック先生… -- 名無しさん (2012-08-04 12 02 22) アルージーュナかわいい! -- 名無しさん (2020-06-30 22 57 29) 名前 コメント
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ダンジョンの実装 任意のシナリオのscenario構造体にdungeon = onとするとメニューウィンドウに「探索」ボタンが出ます。 spot構造体にdungeon = (ダンジョン構造体の識別子)を記述するとその領地で指定ダンジョンに入れるようになります。 デフォルト状態では敵を全て倒すと出口が現れる仕様となってます。 open=onにすると始めから出口がでます。又はイベント関数でopenGoal()とできます。 コンテンツ name = (文字列) ダンジョンの名前 max = (数値) 最大フロア。最大フロアをクリアするとダンジョンクリアとなる。 move_speed = (数値) 百分率で指定します。戦場シーンとの速度比率を設定します。 move_speed = 200 とすると全ユニットの移動速度が2倍になります。 prefix = (文字列) フロア数の接頭辞です。デフォルトは「B」です。 suffix = (文字列) フロア数の接尾辞です。デフォルトは「階」です。 lv_adjust = (数値) 実際のフロア数にこの数値を足したものが表示フロア数となります。 コンテンツ2 各データに@数値の接尾辞を付けるとフロア別に設定できます。接尾辞が無いと全フロアの設定となります。 name = (文字列) フロアの名前を設定できます。 (例)name@1 = 聖地の入口 open = (on/off) 省略時はoffです。敵を全員倒すと出口が現れます。 onにすると始めから出口が出ます。 limit = (数値) 制限時間 bgm = (文字列) BGM volume = (数値) 音量(1~100) blind = (0~256) 省略時は0です。視界制限が無効です。 数値は視界外の暗闇の透明度です。255で真っ暗になります。 256にすると真っ暗でオートマッピングモードになります。ミニマップで一度通った所がずっと表示されます。 base_level = (数値) モンスターレベルの底上げ数値 color = (手前方向[0~7], 手前色相, 奥色相, 手前α値[0~255], 奥α値[0~255], 濃度[1~100]) ダンジョンに陰影をつけます。 この用法はデフォシナのdungeon.datを御参照ください。 迷路の設定(mapファイルの直接指定) map = (文字列) mapファイルを直接指定します。 スタート地点、ゴール地点、宝箱、モンスターはmapファイルに直接配置します。 スタート地点、ゴール地点、宝箱はobject構造体で定義し、 MapMakerでその構造体名チップをmapファイルに配置します。 迷路の設定(自動生成) 各データに@数値の接尾辞を付けるとフロア別に設定できます。接尾辞が無いと全フロアの設定となります。 floor = (文字列) 床のfield構造体を指定します。 wall = (文字列) 壁のobject構造体を指定します。 start = (文字列) スタート地点のobject構造体を指定します。 goal = (文字列) 出口地点のobject構造体を指定します。 monster = (文字列*数値, 文字列, ‥) 登場モンスター monster_num = (数値) 上記のmonsterで列挙した中から登場させる数です。ランダム出現になります。 省略時は0ですが、0だと全部を登場させる事になります。 box = (文字列) 宝箱の外見を示すobject構造体を指定します。 item = (文字列, 文字列, ‥) 宝箱の中のアイテム skill構造体の識別子だと取得スキルとなります。 先頭に@を付けるとアイテムウィンドウにストックされます。 (例)@a_sword unit構造体、class構造体の識別子だと所属勢力に追加されるユニットとなります。 文字列が数値だと獲得資金となります。 item_num = (数値) 上記のitemで列挙した中から登場させる数です。ランダム出現になります。 省略時は0ですが、0だと全部を登場させる事になります。 item_text = (on/off) 省略時はonです。 onだと宝箱にカーソルを合わせると中味が表示されます。offだとされません。 home = (横サイズ, 縦サイズ, 通路の間隔, 擬似乱数のシード値) 迷路の自動生成に影響します。 通路の間隔はマス目(32ドット×32ドット)単位で指定します。 ステージの横サイズは、通路の間隔×横サイズとなります。 同じく縦サイズは、通路の間隔×縦サイズとなります。 (例)home = 20, 30, 6 だとステージサイズは横120マス縦180マスとなる。 最大面積は約5万マスです。それ以上広くすると強制終了します。 擬似乱数のシード値は(-2億~+2億)の任意値を指定します。 数値によって迷路が変化しますので相応しい迷路が出るまで適当に数値を弄ってみてください。 0 にすると完全ランダムとなりプレイ毎に迷路が変化します。 ray = (通過限度, 1way, 2way, 3way) 迷路の自動生成に影響します。これについては適当に数値を弄ってみて御確認ください。 迷路はモグラ法で作成してます。 通過限度を増やすと広い空間が増えます。 1wayを増やすと長い通路が増えます。 2wayを増やすとT字路が増えます。 3wayを増やすと十字路が増えます。 .
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1人ぼっちの女の子、友達探しに荒地へ行った$ ポイトライトのまねっこをして、爆弾作って100人増えた$ 101人の女の子、暑さを凌ぎに雪国行った$ ポートニックと鬼ごっこして、風に飛ばされ10人減った$ 91人の女の子、喉が渇いてお沼へ行った$ イオードさんと隠れんぼして、弓矢に射たれて20人減った$ 71人の女の子、暇を潰しに樹海へ行った$ ローニトークとかけっこをして、大爆発して30減った$ 41人の女の子、お祈りをしに教会行った$ イオナと一緒に天使を眺め、光になって40減った$ 1人ぼっちの女の子、寂しくなって王都へ行った$ トライトⅤ世の後を追いかけ、そして誰もいなくなった なんとなく言葉遊びみたいな列伝もたまにはいいかなと。 ちょっと文章展開に無理があるけど。 行末のは改行記号。元ネタはもちろんマザーグース -- 投稿者 (2010-03-31 09 00 26) ローニトーク(´・ω・) カワイソス -- 名無しさん (2010-03-31 09 25 03) 明らかに浮き過ぎ -- 名無しさん (2010-03-31 10 11 17) なんで投稿しようと思ったのか理解に苦しむ -- 名無しさん (2010-03-31 10 28 47) ・言葉遊びにしたいならちゃんと韻を踏むべし ・他の人材との関連性は最低限に留めるべし ・文章展開に無理があるなら投稿を見送るべし ・始めから誰かの校正や修正案に頼るような他力本願な考えは捨てるべし。甘ったれるな -- 名無しさん (2010-03-31 18 05 38) まぁ別に雑談で良いレベルだと思うけど 気軽に書き込めない雰囲気を醸し出すのはちょっと -- 名無しさん (2010-03-31 18 43 25) 仮にもこうして公共のスペースに公開する作品なんだから、相応の責任は持つべきじゃないか? -- 名無しさん (2010-03-31 20 09 03) 新しい事へのチャレンジは評価するす。 標題が「人材メモ」とかならなぁ。「列伝」であるのが厳しい。 -- 名無しさん (2010-03-31 20 34 40) たて読み取り入れるの面白いね -- 名無しさん (2010-03-31 22 22 27) 新しい試みだし、面白い。 最初に『彼女については次のようなわらべ歌が残っている』とか 最後に『~後世に伝わる子守唄より~』とか入れたら、列伝として通用しそうな気がする。 後世のまともな資料には残りそうにない存在だし、歌だけ残っているとかありそう。 -- 名無しさん (2010-04-02 07 25 54) ちなみに、ゲーム画面には列伝とは表示されないので、実質、人材メモでもいいんじゃないかと思う。 -- 名無しさん (2010-04-02 08 01 42) 新しい試みではあるが、いかんせん実力が伴っていないのが悲しい現実 アイディアだけで投稿すんなよなマジで -- 名無しさん (2010-04-02 10 20 33) でもまぁななあしさんが採用しなければゲームには反映されない訳だし、ここで試みてみるのは良いんじゃまいか? -- 名無しさん (2010-04-02 10 45 26) あくまで妄想投稿所なんだからそこまで厳しく非難しなくてもいいんでね? 採用するかしないかはななあしさん次第だし マトモな作品以外は排除とかいう排他的な考えは慎むべき 大体この作品に限らずネタ系の列伝だってあるわけですしおすし -- 名無しさん (2010-08-27 23 31 44) ↑ 本当にそう 暴言みたいなコメントが多すぎ -- 名無しさん (2023-10-30 12 35 48) 名前 コメント
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アルナス先王の一人娘で、アルナス汗国の大汗(ハーン)を号する。 天真爛漫さの内に、賢しらな謀略を潜ませており、自らの容姿すら 他者を欺く武器とした。旧態依然の汗国の頂点にあって、新風を巻 き起こす大改革を断行して保守派を討伐。アルナスを固めて、先王 の悲願であるブレア地方を奪って他国にその名を知らしめた。しか し、汗国拡大が滞ると保守派勢力が復権し始め、国の要であった宿 将クルトームが陣没すると、毒蛇スネアに内から食い破られた汗国 は一夜の夢の如く消失した。多くを失ったが、その野望の炎はより 一層の輝きをみせ、宿無き彼女に惹かれるものは後を絶たない。 ・『天真爛漫―』から始まる文を短めに ・『宿将』には『豊かな経験や力量を持つ』という意味合いも 含まれるので、『国の要であった』は省く ・『~して』『~て』という形はなるべく繰り返さない 以上、幾つか目に付いた点を踏まえて二行目以降を少々変更してみた。 参考までに。 『天真爛漫さの内に策謀家としての側面を併せ持ち、旧態依然の 汗国に新風を巻き起こす大改革を断行。保守派を討伐して足元を 固めると共に先王以来の悲願であったブレア地方を奪還、他国に その名を知らしめた。だが国土拡大が滞ると同時に保守派勢力が 勢力を盛り返し、宿将クルトームの陣没を機に毒蛇スネア率いる 反乱軍により、汗国は一夜にして消失。$ 身一つで逃れるも大汗(ハーン)としての矜持と野望は失わず、 未だ彼女の瞳に宿る炎に惹かれる者は少なくない。』 -- 名無しさん (2010-07-18 17 19 19) すっと通る文章じゃないだろうか。良いね。 でも、「賢しら」って言葉は座りがいいけど、 利口なふりをする、出しゃばる、とかそういう意味じゃなかっただろうか。 -- 名無しさん (2010-07-18 20 53 20) こういう改訂が進んでくるといいね。 ただ国が「一夜にして」消滅というのは大げさじゃないだろうか。 -- 名無しさん (2010-07-19 17 13 51) 叛乱の激烈さを端的に表わしていて、それほど悪くはないんじゃなかろうか。 彼らは遊牧民族だしね。 ほぼ野戦だっただろうから、保守派勢力のほとんどが裏切ったぐらいの規模の叛乱軍なら、一日でナルディア軍を敗走させることも可能なはず。 まあ、ファンタジーに許される、想像の範囲内ってことで -- 名無しさん (2010-07-19 19 28 23) 自らの容姿すら他者を欺く武器としたって…… もしかして…… -- 名無しさん (2011-06-25 22 25 08) おっと、魔法使い様。想像はそこまでにしたまえ -- oni564 (2011-06-27 01 01 48) 遊牧民同士の戦争ってのは、形勢不利な方はあっというまに散会し、 どこかでまたすぐ集結するだけのダラダラした戦いになるから、 なかなか決着がつかないんだけどね。 勝敗が明確になるのは、大将のクビが飛ぶか大将自らが降伏して、 配下がほぼ全員相手の下につくケースくらい。 まあクルトに人望がありすぎて、 奴の死と同時に部下が全員スネアに降ったって話なら一応つじつまあうけど、 その場合は、ナルはお飾り大将だったってことだね。 -- 名無しさん (2011-06-28 07 00 15) ナルディア側で族長クラスはグリンジャのみ。後は部族出身者ですらない。 対してスネアは六支族中四従えてる。日和見なやつはスネアにつくだろうよ。 -- 名無しさん (2011-06-28 13 03 15) クルトームが単身魔軍対応に出されたら、保守派全員協力してるから、人望はあったんじゃないかな。 フォルゴット(ナルディア宮廷=急進改革派)とクルトーム(穏健守旧派)で対立があって、スネアに付け入られる隙があったんだろうとも思う。 -- 名無しさん (2011-06-29 00 50 38) フォルゴッドは革新ではなく軍師だよ -- 名無しさん (2023-12-28 11 48 07) 名前 コメント
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. ニースルーは、例え高位の神官であっても疑問があれば議論を挑み、語るに足りない相手には侮蔑さえ顕わにしました。 一方イオナは必ず相手を見ます。分を弁え、礼を正し、相手を持ち上げます。 特に、自分を終わった人間だと思っている老人は、若手のホープと目されているイオナの来訪をとても喜びました。 卒業後、彼女たちもラザム教団の実務を担う事になります。 教団ヒエラルキーを駆け上る花形は、魔法部と教理部と見られていました。ニースルーは魔法部を進みます。 ライバルとみられるイオナは、当然教理部を選択すると思われていましたが、彼女は迷わず財務部を選択しました。 財務部に入ると、精力的に活動を始めます。離婚不倫、身分差結婚、養子縁組等の宗教的ロンダリング、高利貸しと回収、(不祥事隠蔽のための)祭祀企画、果てはエフォードと組んでインチキ奇跡上演等など、 外形的に善人でありたい人たちが嫌がる汚れ仕事を、進んで引き受けました。 一方で集金部門の組織化、効率化を進め、教団の財政を中央から把握できるようにしました。その結果、地方で中抜きをしていた神官達の利権を潰してしまいます。 ニースルー自身に閥を作る意思は無かったのですが、彼女に心酔するメンバーと理解する高位神官が集まって、自然発生的に魔法/教理研究会が出来ていました。 そこへ、イオナに利権を潰された神官達が目をつけます。単純に逆恨みした者、利権の復活を狙う者、教団ヒエラルキーの再登を狙う者。 裏を考えないニースルーは、来る者は拒まずの姿勢で迎えました。研究会が大きくなるに従って、反イオナ派の牙城の色彩を帯びてきます。 ニースルー自身も、反イオナの旗頭に担がれてしまいました。 この状況をイオナは寧ろ歓迎しました。イオナは、集まりつつあったメンバーはもちろん、ニースルー自身についても政治的能力は評価していません。 ならば、ニースルーグループをコントロール可能な敵として温存するのは何かと便利です。 善意のカタマリであるニースルーと周辺には、金銭の扱いを熟知する人間が居ません。しかし、グループは大きくなるし、独自の魔法研究を望めば金銭はどうしても必要です。 イオナは、神殿の帳簿に空いた小さな穴を、意図的に見逃す事にしました。ニースルーグループの支えになるし、もし事態がイオナのコントロールを越えそうになった時、横領の事実は何かと役に立つはずです。 厳しくグループを管理するなら防げた事でしょうが、ニースルーには全くその気がありません。メンバーのうち忠誠心過剰なのが引っ掛かり、暴走を開始します。 ですが、グループではともかく金銭を調達してくれるとして重宝されました。 神殿軍について ほとんどの教団関係者(マグダレナも含む)は、神殿軍にある程度の実力があると思っていましたが、イオナはそう思っていません。 実戦経験が無く、明確な指揮系統を持たず、装備が統一されておらず、集団行動の教練を行ってるわけでもない軍隊は使い物にならないんです。 イオナは、アルナス先代の大汗が神殿の自治権を認めていたのは、ルートガルトの威光があったからで、ルートガルトが混乱すれば大人しくしているはずがない、と考えて神殿軍の育成を急ピッチで進めました。 軍隊とは何かと金の掛かるものです。武器や食料、戦闘資材の調達、防御施設の整備、情報の入手、怪我人や死者の家族の生活保障・・・イオナが教団の財政改革を急いだ理由は、ここにもあります。 何とか若い神官たちをモンクとしてある程度の行動が出来るまで育て上げましたが、クルセーダーと呼ばせる予定だった神聖重装歩兵の育成は、ナルディアの侵攻に間に合いませんでした。 (S1でイオナ&ホルスが中立の理由) これアナザーの人かな?面白い設定だと思う -- 名無しさん (2024-01-12 09 40 40) 名前 コメント
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. フェリル城。元はフェリル領主の城であったが今はゴブリンの勢力が接収し、使っている。 山間にある事もあり、かつては難航不落の城塞とも言われたこの城も今では度重なる戦闘により、見るも無残な姿をさらしていた。 チルク「ふー…おっそろしかったけど、なんとか凌いだね。王室育ちのボンボンだって聞いてたけど、頭の回る側近がいるらしいね。 僕等の脅威である魔法を上手く使ってくる。」 最早何度目かわからない戦闘を、辛うじて生き延び防衛したチルクは、 傷の手当をしながら、傍らに腰を下ろしたゴブリンの洞主、バルバッタに笑い掛ける。 しかしいつもと違い、バルバッタは何か深刻な表情のままでいた。 バル「チルク、生き残ったのはどれくらいだ?」 チルク「…戦士が40、魔術師が50かな?」 チルクの言葉にバルバッタは小さくため息をついた。戦闘の際には先陣きって進み、 大きな勝鬨の声をあげ続けるバルバッタであったが、チルクの前では時折この様な悲しい表情をする。 バル「減っちまったなぁ…。皆、気のいい奴だったってのに…」 チルク「……。」 今日の戦闘で知り合いが大分減った。幼い頃から共に山を駆け巡り、人里の食料を奪う時にも一緒に行い、 バルバッタが先頭に立って挙兵した時からの仲間も、今では両手で数える程しかいない。 バル「なぁ、チルク。義弟よ。」 チルク「なんだい、義兄さん。」 バル「俺はアッタマ悪いからよく分からねぇが…今、人間が抑えてるフェリルの地を取れれば、本当にガキンチョ達が飢え死ぬ事はねぇんだな?」 チルク「…確実に、とは言えない。でも農耕さえ始めて文化が根付けば、今までみたいな狩猟や強奪だけの暮らしと比べて、飢え死ぬゴブリンは格段に減るはずだ。 それに食料の確実な確保が出来る様になれば文化を育てる余裕も出て来る。医学だって、育てられるはずだよ。」 食料の乏しいフェリルの山間では、飢えた子ゴブリンで溢れ、簡単な病気でさえ、治療出来ずに命を落とす事が多い。 ふざけた言動をよく取り、有権者達からは疎まれ続けているバルバッタだが、チルクだけは彼がいつもそれらに心を痛め、真剣に悩んでいた事を知っている。 チルク「でも、少なく僕達はバルバッタを支持してるよ。バルバッタがやらなきゃこのフェリル城を奪取する事はできなかった。 それにこのフェリル城にあった食料と薬で沢山のゴブリンが助かったんだからさ。」 バル「…だと、いいんだがよ。」 空元気ながらも二人で笑い合っていた時、部屋の扉が勢い良く開き、ゴブリンが転がり込んで来た。 ケニ「バルバッタ兄貴、大変だ!」 自称、バルバッタ一番弟子の二刀流剣士ケニタルだ。後ろにはバルバッタを信奉するツヌモも居る。 バル「どうした?」 ツヌモ「ゴートの軍が、何時の間にか近い所に!それも大分人数が多い!」 バル「なんだと!?」 チルク「なんだって!?」 がたりと立ち上がるバルバッタとチルク。 バル「馬鹿な。さっき撃退したばかりじゃねーか!皆まだ怪我の治療も終えてねぇってのに!」 チルク「それに城壁の補修だって終わってないよ!?攻撃に耐えられない!第一、一体何処にそれだけの戦力が…」 フー「どうやらゴート軍はシャルパイラ遺跡に軍を隠していた様ですね。」 更に後ろから部屋に入って来たゴブリンの少女がフーリエンが、冷静に淡々と報告する。 フー「敵軍の中にゴート本人が見えます。恐らく先程のは攻撃特化の先発部隊。本隊は今来ている方でしょう。」 これから来るのが本隊。その言葉を聞いて一同の顔色がさっと青くなった。 今の戦力と準備では先程と同レベルの部隊でも勝てそうにないというのは誰にも分かりきっている事であった。 チルク「バ…バルバッタ。どうしよう。このままじゃ全滅しちゃうよ…逃げた方が…」 ケニ「ケッ!この臆病モンチルクが!こうなったら一人でも多くぶっ殺してやらぁ!」 ツヌモ「そーだ!折角手に入れたモンを奪われてたまるかってんだ!」 フー「私はチルクの案に賛成です。人間が書く物語じゃあるまいし、玉砕なんて愚かの極みだと思いますよ。」 焦りもあってぐちゃぐちゃになりつつある四人を見つつ、一人だけ騒がず思案していたバルバッタが、思い詰めた表情のまま立ち上がる バル「おい、チルク。お前ぇ、仲間連れて逃げろ。」ケニ「兄貴!?」 ツヌモ「何言ってんですか!」 驚愕する二人の方を向いて、バルバッタは彼らの肩を掴む。 バル「どーせこんまま行ったって文字通り犬死にじゃねーか。 それよか一体退いて相手が勝って油断した所を奇襲してみろ、奴等、なんにも出来ずに逃げるだろうよ!」 ケニ「おぉ、流石兄貴!」 ツヌモ「確かに!そっちのが良さそうだ!」 ケニタルとツヌモはバルバッタの意見に深く感動して騒ぎ出す。 フー「そんなの、上手くいくはずな…」 相手がその程度の事に対策を立て無いはずが無いと分かっているフーリエンが否定しようした所、バルバッタが手で口を塞いでじっと見つめる。 フーリエンはハッとする。バルバッタは、明らかに分かっている目をしていた。その上でこう言っているのだ。好戦的な二人を退かせる為に。 チルク「で、でも…幾ら逃げたって追い付かれるよ。こっちは怪我人だって居るんだ。」 バル「なぁに、心配ねぇって!この俺様が囮になって奴ら引き付けとくからよ!」 チルク「でも、それじゃ義兄さんが!」 思わぬ提案に思わず普段二人の時にしか言わない義兄さんと口走るチルク。それだけ混乱してしまっているのだ。 そんなチルクの様子を見て、バルバッタはニヤリと笑った。 バル「ヒャッハッハ!こちとら秘宝!マクラヌスを持ってんだぜ?王子なんてボンボン程度にゃ捕まらねぇよ!いっそ数人沈めておちょくってやらぁ。」 嘘だ。フーリエンは気づいた。マクラヌスがあると言っても多勢に無勢が過ぎる。 確かにバルバッタは同世代のゴブリン内では一番強いが、単体で人間相手に勝てる程特出した力がある訳じゃない。 そんな事ゴブリンの賢者アスターゼか竜王ルルニーガ位しか出来ないだろう。 しかし、バルバッタを信頼仕切っているチルクは気付かない。納得した表情で引き下がった。 バル「そーと決まればお前等!さっさと撤退準備を始めやがれ!」 ゴート軍到着が刻一刻と迫る中、ゴブリン達は撤退の準備を急いでいた。ある者は怪我した仲間を背負い、ある者は今後の為に食料と薬を担ぐ。 チルクが率先して指示を飛ばし、ケニタルとツヌモが尻を蹴っ飛ばして急がせる中、フーリエンはバルバッタの居る部屋へと足を運んだ。 部屋ではバルバッタがいつもの簡素な鎧を着込み、剣に欠けや不備が無いかをチェックしている所であった。 フー「何を考えているんですか?バルバッタ。」 バルバッタは声を掛けられて初めてフーリエンに気付き、にっこりと笑う。 バル「おお、フーリエンか。お前はもう準備終わったのか?したらちょっと鎧見てくんねーか?肩口がきつくってよ。」 フー「ごまかさないで下さい。」 口ではそう言いつつバルバッタの後ろに回り、フーリエンはショルダー部分を締める紐を少しだけ緩める。 フー「ゴート軍は一人で相手出来る物じゃありませんし、一人で突っ込んできた相手をおめおめと逃がす程間抜けじゃないって事は貴方は良く知っているでしょう? 魔法に弱い私達ゴブリンを守る為に一人突っ込んでマクラヌスをぶっ放して敵の魔力を削り続けた貴方なら…」 バルバッタは答えない。答えないからこそ、それが答えになっていた。 フー「物語の、悲劇の主人公にでもなったつもりですか。私達ゴブリンがそんなものになれない事、分かりきっているでしょう。 第一、貴方が居なくなって誰がフェリル党を率いるんですか?」 バル「チルクがいる。」 バルバッタのその答えにフーリエンはため息をつく。 フー「確かにチルクは多少頭が回る様ですが、基本的に臆病です。為政者ならとにかく、戦時に上に立つ器では」 バルバッタはフーリエンに全てを言わさず、両肩を掴みぐっと力を込める。 バル「あいつを、この俺様の義弟を侮るなよ。確かにあいつは弱気だ。オーク5匹相手に逃げ出す位だ。」 フー「…」 バル「でもな、俺がオーク5匹倒す間にあいつは頭を廻らせて策を練る。そして俺がもう5匹を倒す間に20匹倒すんだ。 チルクは、肝さえ据われば強くなる。それこそ、ルルニーガやアスターゼに迫る程にな。」 フーリエンは答えない。いや、今まで見た事も無いバルバッタの気迫に圧されて、口を動かす事が出来なかった。 そこにケニタル達と馬鹿やったりヒャッハーと叫んで突っ込んでは慌てて逃げてくる様な普段の姿は無く、一人の戦士がそこに居た。 両者は共に沈黙し、静寂だけが部屋を支配する。 静寂は部屋の扉が開く音で破られた。 チルク「バルバッタ、大体準備が…」 チルクは部屋に入るなり、驚愕の表情で二人を見る。 バル「ん?どうしたチルク。」 バルバッタの質問にチルクは顔を赤らめて目を逸らす。 チルク「あー…えと、邪魔だったかな?」 バル「あん?」 バルバッタは首を傾げて自分の様子を鑑みた。 フーリエンの肩を真っ正面から力一杯掴んでいた自分がいた。まるで、告白の現場の様でもある。 バルバッタは慌てて手を離した。 バル「バ…馬鹿!そんなんじゃねぇよ!くだらない勘違いすんな!」 フー「あら、力一杯私の肩を掴んでおいてそういう事言うんですか?さっきの言葉は嘘なんですか?」 バル「んなっ!?」 フーリエンは気圧されたお返しとばかりにニヤリと笑って言う。 バル「違うだろ!いや、さっき言ったのは嘘じゃ無いけど違うだろ!」 チルク「いや、慌てなくていいよバルバッタ。僕が君の秘密を喋るハズも無いんだから。」 バル「そうじゃ無くて!あー…そうだ!準備が終わったんだって?」 フー「わざとらしいですねぇ。」 横でクスクスとフーリエンが笑う。バルバッタはギロリと一睨みした。 バル「準備が終わったんだったらちょうどいい。俺からチルクに渡しときたいモンがあったんだ。」 チルク「渡したいもの?」 バルバッタは部屋の隅に置いてあった袋をチルクの方に放る。おっと、と声をあげてチルクはその袋を抱き取った。 チルク「これは?」 バル「俺の荷物に決まってんだろ。お前は俺に荷物持ったまま戦えってのか?大事なモンとかも入ってっから丁重に扱ってくれよ? それと念の為、追い付かれた時の為の秘策も入れといた。ある程度逃げた後に開けて確認しとけ。」 チルク「分かった、預かっとくよ。でも秘策って別に今見ても…」 袋を開け様としたチルクの頭をバルバッタはパカンと殴った。 バル「んな、時間あったらとっとと撤退しやがれ。なぁにこちとら秘宝持ちなんだ。心配いらねぇよ!ほらさっさと行った行った!」 二人の背中を押して、部屋から追い出す。 バル「おいフーリエン!チルクはちょいとおっちょこちょいだからよ、しっかりサポートしてやってくれや。」 フー「…えぇ、分かりました。」 チルク「酷いよバルバッタ!僕はそんなに頼りないかい!?」 バル「言われたくなけりゃ仕事をキッチリこなせ!いい加減俺を頼らずとも仕事の一つや二つ出来る様になりやがれ。」 チルク「言ったね!?見てなよ?一人の脱落者も無しに脱出してやるからね!そして帰って来たら認めさせてやるからね!」 バル「ヒャハッ!言うねぇ。しかし、でなきゃゴブリンの理想郷なんざ作れねぇからな!」 チルク「だね。んじゃ、行ってくるよ!バルバッタも頑張って!」 バル「おう、任せとけ!しっかり足止めしてやんよ!」 二人は笑い合いハイタッチをして、チルクは城を後にした。 チルクがバルバッタから受けとった秘策が「秘宝マクラヌス」である事に気付くのは、城を出て暫く後の事だった。 「老師、この通りです!」 もう何度目であろうか。チルクはアスターゼの庵を訪ねては、その門前に 座り込んでいた。 「………」 大賢人はただそれを黙殺する。既に破門した身とはいえ、かつての弟子が しでかしたことで、もはや人間とゴブリンとの関係は修復不可能にまでなっていた。 戦を避け、逃げ延びるフェリル党の残党たちを匿うことも限界になりつつある。 ふと、外を見やると、雨が降り出した。その後、どれほどであろうか、 両者は沈黙のまま門を隔てて対峙した。そろそろ、根を上げて帰るころだろう。 いつもがそうだ。チルクとて、自由な身ではない。一党を食わせていくために、 いつまでもここで油を売っているわけにもいかないのだ。だが―― ――轟音、そして一瞬の後、一匹のゴブリンが庵の中へと侵入する。 アスターゼと目が合う。他でもない、チルクだ。 「なぜ、バルバッタは死なねばならなかったのか」 大賢人の庵の門は、並大抵のことで破れはしない。魔力負荷限界をいくらか超えたのだろう、 チルクは魔力を集中させたであろう利き腕を裂傷させつつ、血と雨を滴らせたままの姿だ。 だが、そこには、若さに任せ、血に走る者の浅ましさはなく、むしろ凍てつく寒空のような 冷徹さを窺わせる。 「秘宝を持ってしまったことが彼奴の最期。己の分を弁えず、限界を超えてひた走った 結果がこれじゃ。結果、多くの同胞を巻き添えにし、今、また、次代を担う子らをも狂わせる」 「確かに、貴方に取っては、狂った妄想に過ぎないでしょう、ボクらの理想は。 そう、人間たちに敗北することしかできなかった貴方にとっては!」 大賢人の表情は、微塵も変わりはしないが、内心では、わずかばかりの怒りと、感心が 芽生えていた。 「貴方や竜王は確かに大した方々だ。だが、貴方がたは、自身に陶酔するあまり、 次代の可能性を奪ってしまっている」 バルバッタのフェリル党結成より数十年ほど前であったか、ルルニーガとアスターゼを 中心とするゴブリンたちが、少数ながら、人間に対し独立戦争をしかけたことがあった。 「貴方たちの代の頃は、良かったでしょう。おかげで、貴方は人間たちから ありったけの知識を、ルルニーガ殿は、ありったけの武術と勇名を得ることができたの ですから。それに対して、ボクたちの挙兵はなんだったのでしょう? ただ、ゴブリンが 劣等種であるとを知らしめただけではいないですか!」 「………」 「忘れてはいないぞ。魔王召喚が実現したのは、貴方にも責任がある! 貴方の あの論文だ。そして、魔王召喚、人間たちの王朝の崩壊、それらは、ゴート軍がこの地に 流れ着くことを予期させる。貴方ならば、戦って勝てないことを知っていた筈だ。そう、 バルバッタは、ボクの義兄は、貴方が殺したんだ!」 無言のままアスターゼは腰を上げる、動作らしい動作もなく、ティアマトが4体、チルク の四方に召喚される。――――――――――――。 その数日後、フェリルの北部の山間部に、鋭気に満ちた目をしたゴブリンたちが集う。 「ほう、わしが呼びに行くまでもなく、老師自ら動くとはな」 「ほっほ、お互い、若い者には勝てぬと見る」 大賢人の見やる先には、若い男の戦士ゴブリンたちと軽い喧嘩のようなものをしている 半人半獣の娘がいた。 「負けられては困る。我らの理想、あやつらに預けるためにも、できうる限りの道は拓く」 「死ぬるのなら、御主一人にしてもらおうかの」 「ぬかせ」 「チルク、逸るゴブリンたちをよく今日まで鎮めてくれました。いよいよですね」 フーリエン。普段冷静な彼女も、新たな英雄の誕生、そして自分たち種族の 日の出に心を躍らせていた。 「やるぞ! あたしとルルニーガさまと、それとそれとみんなでおおあばれだ!」 ムッテンベル。バルバッタの代には、前線に出れなかった彼女も、牙を研いでこの日を待っていた。 「ああ、みんな。よく集まってくれた。人間たちは、今、内輪揉めでボクたちだけに戦力を 集中できない。皆の中には、亡きバルバッタの仇を討ちたいという者も多いだろう。ボクもその一人だ。 だが、王都に全力を傾けるゴート軍をこちらに向き直らせる必要はない。まずは、フェリルに残った奴らを 侮らせたままに、追い込む。奴らは、最期に後悔するだろう、ゴブリンを侮ったことを!」 「オォオオオオオーーーーーー!!!」 新生フェリル党の初動は、ゴブリンらしからぬ少数によって行われた。 少数というのは、フェリル党のメンバーのみのことを指し、実際に戦場に居合わせたゴブリンの数は 相当数のものであった。 「不始末だな、代官殿」 「マクセンか。その呼び方はよせ、私には合わん」 「ファルシス騎士団が、砂漠の民に追われて、南下してきてやがる。あの匹夫共と正面からぶつかるのは 気が引ける。ある程度、暴れさせて山地に誘い込んで撃つがいいか?」 「ああ、今回の襲撃も以前と変わらぬ散発的なものだ。野犬どもは餌を欲しがって里へ降りてきたに過ぎん。 おまえも、ラムソンの番犬どもに食い殺されぬよう気をつけろよ」 フェリルの代官=テステヌは此度のゴブリンの襲撃もまた、取るに足らぬ些事。モンスターの襲撃と同等のものと 思っていた。彼の手腕により、見事に罠に嵌り、死傷したゴブリンの数はかなりの数となった。 それに対し、フェリル党の精鋭たちは、数えるほどの脱落者もなく、生還してみせ、また、多くの同胞を救出した。 これにより、知なく、統率なきゴブリンの脆さを痛感したゴブリンたちにフェリル党は英雄視されていく。 その10日ほど後、これもまだ、公的に戦争とは呼ばれず、所謂事変と呼ばれる戦いがあった。 戦いの場は、彼らの始まりの地、フェリル城……。 王都攻略戦において、本軍は連戦連勝。その報を受け、また、フェリル特有の風習における精霊節であったため、 城内はお祭り騒ぎとなっていた。祭りの目玉は何と言っても、ゴート軍と前フェリル党の戦いを描いた演劇であろう。 邪悪な魔法を使う悪の獣鬼が正義の王子によって成敗されるという、子供向けのものであった。 それは、今まさに、時代の英雄にして、大陸の覇者となりつつあるゴート三世その人を取り上げたものである。 演劇は物語の佳境に入り、悪の獣鬼に王子がとどめを刺そうとしたその瞬間、 「そして、王子は、力尽きるのでした」 どこからか放たれた魔法が王子役の役者を射抜く。役者は、口を目から炎を噴き、倒れることもできず、その場で 火柱にされる。瞬間――、フードを被ることで耳を隠していた女ゴブリンたちが降り立ち、大衆の前でゴート軍役の 男たちを惨殺しはじめる。剣が一振りされると、フードがめくりあがり、獣の耳が露になる。 また一振りされると、血飛沫が悲鳴なくあがる。騒ぎを聞きつけた兵士たちがやってくるが、丸い何かが投げつけるられると煙が立ち込め、 視界が奪われる。聴覚・嗅覚の鋭い彼女たちには、悪視界も障害にはならない。たじろぐ屈強な兵士たちの胸倉に飛び掛り、 喉元に刃を突き立てる。 祭りの喧騒は一瞬にして、悲鳴と混乱の色へと変わってしまった。 「派手な催しになったな」 見張り台をひとつ潰した後、竜王は城内で暴れまわる兵たちを督戦していた。 演劇を見ていた、または、祭りに来ていた人間の子供たちは、この日以降、ゴブリンを善と見ることはないだろう。 代官=テステヌはこの事変を持ってもゴブリンたちを野犬と蔑視するのをやめたかったが、 「我らは、フェリル党! 亡きゴブリンの英雄、バルバッタの意思を継ぐ者たちなり。 我らは、フェリル国人たちがゴブリンへの弾圧をやめ、ゴブリンの自治・独立を認めることをここに要求する。 此度の無作法な襲撃は、先の戦乱の後に、不当に殺傷された我が一族への追悼の意を込めたものである。 この要求に対する返答が10日以内にない場合、我々は宣戦の布告も辞さない覚悟である」 「野犬が、生意気に人間の真似をするか。おまえたちに、権利などない。害悪は除かれてしかるべきだ」 事後処理をしてテステヌは唖然とした。非戦闘員以外の死傷者の少なさにである。暗い考えが頭をもたげるが、 頭を振ってそれを否定する。まさかな―――と。 その10日の間に周辺の事情は大きく変わった。整然と撤退するはずのマクセン軍であったが、 陥陣営の異名をとるロイタールと土の賢者ワットサルトの前に、無様に追撃される形となる。 「卿の同胞はうまく動いているようだな」 土の賢者は傍らに立つゴブリンに問う。 「まだ、本格的は動きもないのにわかるのですか」 土のマタナ。彼は、表情のない表情のまま、問い返す。 「ふっ、私の眼は節穴ではないぞ。10日間の猶予の間に、ずいぶんと見えない攻撃をしている ようではないか。しかし、大賢人が軍師についたとはいえ、見事の一言であるな。あれでは、 フェリル城陥落は時間の問題だろうて」 改めて、土の賢者の聡明さを知ることとなるマタナは、表情のない表情のまま、視線をそらした。 一方、フェリル城では。 「確かにベヒーモスなのだな」「はっ、間違いありません」 予想外に思い切った南下政策。これでは誘い込むのではなく、追い込まれている。マクセンは無事か、 それも心配であった。フェリル城東部の山間部は騎士団に制圧されるのも時間の問題。 さらには、王子の本軍との連絡は途絶して3日が経つ。兵たちの間に不安が広がっている。 そして、ゴブリン。奴らは途方もない、本当に途方もない数をこの城の付近へと集結させている。 どうしてこうなった。―――そうだ、この頭痛は、ゴブリンどものせいだ。あの厄介な獣共は、 騎士団にぶつけてやればいい。犬同士、仲良く食い合えばいい。今は、戦力集結と、状況把握が 肝要だ。一人で全てしょいこむこともない。 そう決心すると、テステヌは、兵たちに号令する。多少の動揺も、持ち前のカリスマで静めると、 テステヌ軍は、独自の退路を用いてどの勢力とも交戦せずにフェリル城、フェリル東から脱出する。 「さて、今後の方針だけど」 チルクは、幕僚たちを集めて軍議を開いていた。フェリル党の新たな本陣、フェリル城本丸にて。 マタナをファルシス騎士団に客将として派遣したのは、アスターゼの策であった。 フェリル島上陸以後、ファルシス騎士団とは共闘する密約をかわしていたが……。 フェリル党の動きは早かった。チルクをはじめとする有力者たちは、武装解除を理由に、 ファルシス騎士団の駐屯地へとやって来た。 「ふん、人間の真似事か? 軍師よ、本当に使えるのだろうな」 白い甲冑に身を包む巨漢。ロイタール都尉はいぶかしむ。 「私が教育したマタナの例もあります。ゴブリンの可能性は未知数です。それに、 敵を油断させるのにも最適でしょう」 「騎士よりもさらに前線を任せられる狗か……いっそ哀れだな」 やや細身の騎士、ホーニングはそう言い放つ。 「やっぱり、追い返そう。彼らは、今ボクらも敵に回せば、三方に敵を持つことになる。 それに対して、こっちは……。今生かしておく必要はないよ。討てるときに討っておこう」 ―――。 「しかし、それでは、我が軍は信用を失います」 「そう、でもそうしなきゃいけない程の相手なんだ。騙まし討ちの形にはなるけど、 レオームがやったのとそうは変わりない。なに、彼らには、負け犬になってもらうよ」 「ええ、哀れですね騎士とは」 その声と共に、無数の召喚獣らが騎士団本営内部に召喚される。 それと連動して、煙玉が投げ込まれ、特務隊が突入する。 「やはり、そう来たか。だが、想定内だ。ベヒーモスたちは敵だ、そう、召喚獣は全て敵」 混乱らしい混乱もなしに、召喚獣たちは討ち倒され、特務隊のゴブリンガールたちも撤退していく。 「ゴブリンたちが約束を破ったぞ! 全軍、戦闘用意!!」 小賢しい浅知恵を看破し、圧倒的な武威で叩きのめす。そういうシナリオが彼らの中にはできていたの であろう。だが、 「どけどけぇっ! 陥陣営、ロイタールのお通りだーーーっ! うぉっ!?」 最前衛のゴブリンらを蹴散らすロイタールの無敵の突撃を止める者がいた。彼の白馬が、片手で 頭を抑えられ、止められている。 「もらったぁーーーっ!」 さらに、ホーニングが側面から突撃するも、これも片手で止められる。 「なんだ!?」「両都尉が止められるだと」「おい、あの面は」「ああ、聞いたことがある」 「しかと見よ、人の子らよ。我こそは、ルルニーガ!」 二頭の駿馬を地面に叩きつけ、二騎の騎士を落馬させる。 「フェリル党が洞主、チルクの先槍である!」 遠心力をつけて振るわれた豪腕が、防御に出した槍をひしゃげつつ、ロイタールの首を もぎとる。騎士の誇りはどこへやら、ホーニングは脱兎のごとく逃げ去る。 その一瞬のできごとに、その場の人間たちは唖然としていた。土の賢者さえも。 そして、土の賢者の最後の時が近づいてきた。 「なに、貴様、どこから!?」 チルク。ベヒーモスの腹のしたに掴まって騎士団本陣奥深く侵入していた。 小高い岡の上で、高らかにその名を呼ぶとともに、溢れ出す魔力がその場にいる全ての 目を釘付けにした。 「マクラヌス!」 その日、ゴブリンは人間に勝利した。 ちょっとゴブリンプレイしてくるわ -- 名無しさん (2011-02-09 23 45 06) 俺もちょっくらいってくるわ。だれかバルバッタの死亡イベント実装してくれないかな。 -- 名無しさん (2011-02-10 02 18 21) 熱い -- 名無しさん (2011-02-10 21 19 31) ばるばったーーー涙でたぜ -- 名無しさん (2011-02-20 13 47 33) 俺もゴブリンプレイしてくるわ -- 名無しさん (2011-02-20 18 54 13) 要所が破綻しまくりだが熱いことは間違いない -- 名無しさん (2011-02-20 19 00 55) VTのゴブリンは本当に熱いと思う -- 名無しさん (2011-09-25 03 02 46) ↑わかる。FT演義とかの影響もあるのかな -- 名無しさん (2023-10-24 18 39 45) 名前 コメント
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パーサの森の野営地にて、ラクタイナとの決戦前夜―― 部下たちを集めて作戦会議をしていたスヴェステェンは、ふと見やった先に、野営地の門を出ようとしている主君アルティナの姿を認めた。 その背中にはかすかに憂いの色があるように思えた。 アルティナ「…………」 スヴェステェン「お館さま」 アルティナ「……!? ああ、スヴェステェンでしたか」 アルティナ「どうしたんですか、こんなところまでわざわざ……」 スヴェステェン「お館さまのほうこそ。野営地の外に何か用があったのですか?」 スヴェステェン「しかし、この近くにまだ敵が潜んでいるやもしれません。それならば、念のために私も同行したく思いますが」 アルティナ「いえ、なんでもないのです……」 アルティナ「なんでも……」 パーサの森の木々の作る暗がりのせいで、アルティナの表情はよく分からない。 この時、一部下としての務めを果たすならば、すぐさま主君を安全な場所へと導くべきだっただろう。 少なくとも、オーティやガルダームならそうしたはずだった。 もしセレンだったなら……いや、この場合は暗闇に乗じて別のことをしたかもしれない。 だが、ともかくスヴェステェンは、その場に立ち止まったまま会話を続けた。 スヴェステェン「いや、私にはなんでもないようには思えませんな」 スヴェステェン「何か悩んでおられるのではないですか」 アルティナ「……どうしてそう思うのですか?」 スヴェステェン「今は主君と部下の関係とはいえ、我々は仮にも幼少時を共に過ごした間柄ですから」 スヴェステェン「四六時中とはいきませんが、とても長い間、お館さまに親しませていただきました」 スヴェステェン「ですから、それぐらいのことは一目瞭然で御座ります」 スヴェステェンは真面目腐った口調でそう言った。 アルティナはしばらく黙ったままスヴェステェンの顔を見つめていたが、ふいにくすくすと笑いを漏らした。 ひそやかな笑い声がパーサの森の静けさの中で響いた。 アルティナ「ふふふ……本当に頼りになるお人ですわね」 アルティナ「そうですね……貴方の言うとおり、悩みを抱えているのは確かです。でも、単なる物思いの類であって、大した悩みではありません」 アルティナ「野営地の外まで出てきたのはうかつなことでした。余計な心配をかけてしまいましたね……」 アルティナ「でも、本当に何でもないですわ」 スヴェステェン「そうですか。お館さまがそう仰られるのなら……」 アルティナはそう言って踵を返すと、ゆっくりと野営地の方へ歩み始めた。 しかし、その歩みの調子は、どこかしら不自然なようにも思われた。 それに、もし月明かりが彼女の顔を照らしていたら、その浮かない表情を見てとることができたかもしれない。 スヴェステェンはすぐに主君へつき従ったが――おもむろに、数歩歩いたところで足を止めた。 アルティナの足も自然と止まることとなった。 スヴェステェン「お館さま」 アルティナ「あ、どうしたんですか……」 スヴェステェン「明日は……重要な決戦ですね。多くの竜騎士たちが、この日のために死んでいった……その悲願がまさに明日の決戦です」 アルティナ「そうですね……明日は、重要な決戦……」 スヴェステェン「我々の努力が実って、もはやラクタイナには後がない状態になりました。しかし、それだけの分、ラクタイナも死に物狂いで攻め立ててくるでしょう」 アルティナ「…………」 スヴェステェン「お館さま」 アルティナ「はい……」 スヴェステェン「出過ぎたまねでしたら申し訳ありません」 スヴェステェン「しかし……お館さまの様子は少しおかしいように思えます。ですから……やはり、些細な悩みごとであっても、いくらか洗い流しておいたほうが良くありませんか」 スヴェステェン「あいにく、ここならば誰にも聞かれる心配はありません。差し支えなければ……このスヴェステェンが聞き役になりますが」 アルティナ「貴方が聞き役……ですか?」 スヴェステェンの突然の申し出に、アルティナは躊躇したようだった。 パーサの森特有の涼しい風がいつのまにか吹き始めていて、しばらくの間、風の音だけがあたりに聞こえていた。 しかる後に、アルティナが重い口を開いた。 アルティナ「そうですね……わかりました。お願いすることにします。このままの状態で戦場に出たら、いたずらに竜騎士たちの士気を下げるだけですし……」 アルティナ「でも、決して笑わないでくださいね」 アルティナ「それほど恥ずかしい……いえ、本来はあってはならない、持つことそのものが騎士団総長として失格であるような、そういう悩みなのです」 アルティナはまだ躊躇しているようだったが、やがてぼそぼそとした口調で語り始めた。 アルティナ「その……私は長らく、全軍の最前線に立って戦ってきました」 アルティナ「それが騎士団総長の務めであり、義務であると信じてきましたから……」 アルティナ「そのことについて疑問を抱いたことはありませんでした」 アルティナ「しかし……あのおぞましいものが現れて、あのおぞましい光弾をあびた竜騎士たちの姿を見て以来、私は……」 アルティナ「ああ、こんなことが許されてよいはずかありません……でも、私は少し……怖くなってしまったのです」 アルティナ「全軍の先頭に立つ者がこんな弱腰ではいけません……そのことは十分に分かっているつもりです……」 アルティナ「初めのうちは本当に些細な恐怖だったのです」 アルティナ「しかし、騎士団総長としての義務感、亡くなった仲間たちへの責任感、最前線に立つという緊張感、ほかにもいろいろな感情が折り重なって……」 アルティナの声がだんだんと震え始めた。 そこには、輝かしいリューネ騎士団総長の姿はなく、一人の若い娘が立っているだけだった。 アルティナ「私は……戦場に立つのが……怖く……」 アルティナ「怖く……なって……」 スヴェステェン「お館さま……」 スヴェステェンはどう声をかけてよいかわからなかった。 先程は「一目瞭然だ」と豪語したスヴェステェンだったが、彼は今までに、こんなアルティナの姿を見たことがなかったのだ。 アルティナ「ああ……こんなことではいけません、わかっているのに……」 アルティナ「しかし……ふふふ、私も弱くなったものですね。まさか、よりによって貴方の前で、こんなふうに涙を流してしまうだなんて……」 アルティナは涙を浮かべたまま自嘲気味に笑った。 その乾いた笑い声を聞いて、ふと、スヴェステェンは声をかける必要が全くないことを悟った。 彼は言葉をかける代わりに、おもむろに手を伸ばすと、そっとアルティナの体を抱きしめた。 アルティナは驚いて身を震わせたが、しばらくすると彼へ身をゆだねた。 それから、アルティナは彼の胸に顔をうずめて、心の中の葛藤を絞り出すかのようにすすり泣き始めた。 パーサの森に呼吸音とすすり泣く音だけが響いていた。 この瞬間は永遠に続くかのように錯覚された。 アルティナ「スヴェステェン……」 アルティナ「ありがとう、もう大丈夫ですわ」 アルティナ「少し元気をもらったような気がします。なんだか気が楽になりました……スヴェステェンのおかげです」 アルティナ「ありがとう……」 暗がりの中で判然としなかったが、アルティナは照れたような表情を浮かべた。 スヴェステェンは黙ってうなずいた。 もうそろそろ野営地に戻らなければならない時間だった。 彼は再び歩き出そうとしたが、また足を止めて、アルティナの方へ向き直った。 スヴェステェン「お館さま」 アルティナ「なんですか?」 スヴェステェン「もし、お館さまの身に危険が及んでも……ご安心ください」 スヴェステェン「このスヴェステェンが命に代えても守って見せます。必ず……」 アルティナ「うふふ……ありがとうございます」 アルティナ「本当に、そういう真っすぐなところは昔から変わらないんですね」 アルティナ「でも、一つだけ文句をつけるとすれば……貴方も死んだら絶対に駄目ですわ」 アルティナ「二人とも生き残るか……」 アルティナ「それとも、二人とも死んでしまうか。どっちにしろ、貴方が死んで、私だけ生き残るだなんてことは、絶対にあってはなりません」 スヴェステェン「しかし……」 アルティナ「お願いです。私を助けようとするのは嬉しいですけど、どうか無茶だけはしないでくださいね……」 スヴェステェン「ならば、無茶にならない範囲でお館さまを助けます」 アルティナ「うふふ、まったくもう……」 それからしばらくの後、二人は何事もなく野営地に戻り、それぞれの宿舎に入った。 夜が次第にふけていく中、彼らが何を思っていたのかはわからない。 それを知ることは永劫にかなわないであろう。 翌日の激戦――一発の光弾がアルティナ目がけて飛来した時、スヴェステェンは身を呈して彼女をかばった。 しかし、わずかな残光が被弾し、アルティナも命を落とすことになった――図らずも、アルティナの願いはかなうこととなったのだ。 fin 切ない、儚い、けど美しい。 -- 名無しさん (2012-08-04 13 50 38) セレンは何をする気だw -- 名無しさん (2012-08-04 17 17 48) セレンの扱い草なんだ -- 名無しさん (2023-04-30 11 26 56) スヴェステェンがシリアスになるとセレンがふざねる -- 名無しさん (2023-11-21 18 45 21) 名前 コメント
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